好きな色を選んでもいいの?
私はかつて、暴力や貧困など困難な状況下にある女性と子どもたちを一時保護する仕事
に就いていたことがあります。
女性や子どもたちに、ほんの少しでもホッとしてもらうためリラクゼーションの時間を
設けていました。
ある時、クリニカルアートのプログラムを楽しんでもらおうと思い、オイルパステルの
箱を開け「好きな色を3色選んでくださいね」と声をかけたところ2人の子どもを連れて
保護されていた女性が小さな声でこう言いました。
「先生、本当に私の好きな色選んでいいの?」
咄嗟に返す言葉が出ませんでした。
好きな色さえ選ぶことが許されないこの女性の日々は、どれほど抑圧、束縛されたもの
であったかは想像に難くありません。
今、私はクリニックで治療としてクリニカルアートを担当させてもらうようになり
「色」についてクリニック院長から学ぶ機会も増えました。
「好きな色」はその人の気質、考え方などを表す、いわばその人の幹のようなもの。
自分自身として生きること、考えることすら許されなかったのでしょう。
退所の日まで、何度か絵を描いたりものつくりをする機会をもちました。
「楽しい」と次第に笑顔を見せてくれるようになりました。
好きな色の服を着て、好きな色の靴を履いて、笑顔で行きたいところへ歩いて行って
くれてるといいな・・・